はじめに

 日本人の7割は、髪で損をしています。

 

 そう言われたら、あなたは驚くかも知れません。けれども、15年間ファッション誌の撮影をディレクションし、何万人もの読者の変身企画に関ってきた私は、確信をもって言えます。

 

 女性の印象は髪で決まります。

 

 メイクを変えるより、服を買うより、ダイエットをするより、話し方講座に通うより、あなたの印象を決めるのは、実は、髪です。

 

 でも、残念なことに、日本ではその髪の優先順位が低い女性が多く、髪で損をしている人がたくさんいるのです。

 

「女の印象は髪で決まる」と言われても、ピンとこない気持ちはわかります。「たかが髪」と思う人もいるでしょう。なにしろ、私自身がそうでしたから。

 

 すっぴんで人前に出るなんてありえない、服はある程度流行を意識して・・・・・と思っていても、髪に関しては「寝グセさえついてなきゃいいや」と思っていたのたクチです。

 

 仕事さえできれば生きていける。髪なんて、一番ラクなのがいいと思っていたので物心ついたときからずっとショートヘア。洗ったら洗いっぱなし。ドライヤーすら持っていなくて、つき合い始めた彼氏にドン引きされたくらいのズボラ女でした。

 

 そんな私が、「え?女性にとって一番重要なのは髪なの?」と思ったのは、今から15年前。25歳でファッション誌のライター転職したときのことです。

 そこで私は、ファッション誌に関わるプロの誰もが「女性がきれいになりたいと思ったら、最初に手をつけるべきは、髪」と考えている衝撃の事実を知りました。

 

 たとえばファッション誌の編集長は、新人モデルをまず美容院に送り込みます。髪が決まらなければ、服も似合わないし、メイクも映えない。そう思っているから、「まずは髪を整えてきて」と新人モデルに言うのです。

 最初に髪があって、次に服とメイク。ファッション業界の先端にいる人たちですら、髪が一番大事と思っていることは、驚きでした。

 

 髪が大事なのは、モデルだけではありません。

 

 予約がとれないことで有名なパーソナルスタイリストさんも、顧客に対して「まずは髪を変えましょう。そうしたらもっとおしゃれに見えますよ」と美容院に同行しています。

 

 肌トラブルの掛け込み寺として知られる著名な皮膚科の女医さんですら「肌も大事だけれど,モテるためには、まず、髪」と言い切っていますし、ダイエットの誌面を作っているチーフは「2~3キロ程度だと写真にその差は映らない。それより、髪をいじったほうがよっぽどやせて見えるよね」と言います。

 

 髪って、そこまですごいのか・・・・・。がぜんヘアスタイルに興味がわいた私は、「できるだけヘアページの企画をやらせてほしい」といろんな編集部にお願いしました。

 

 そして髪の力に魅せられた私は、2年後にはヘアページだけを専門に作る、日本初の「ヘアライター」になりました。

 

 あれから15年-。

 私が撮影ディレクションをしてきたヘアスタイルは、数にして4万人ぶん。現場では、1人あたり50カットから200カットくらいの写真を撮影します。撮ったヘアスタイルをすぐ画面でチェックして、美容師さんに髪を直してもらってはまた撮り、どの角度が一番きれいに見えるかを判断して、最終的に1枚を選び、誌面を作る。これが私の仕事です。

 

 

 美容の聖地といわれる表参道近辺の美容師さんとの撮影はもちろんのこと、北海道から沖縄まで、47都道府県すべての美容師さんと仕事をし、女性がもっともきれいに見えるヘアスタイルについて一緒に考えてきました。

 

 

 下は3歳児から上は80代まで、日本で一番、女性のヘアスタイル写真を見ているのが私だと思います。

 

 

 15年間くる日もくる日もヘアスタイルのビフォアとアフターを見つづけてきた結果、私は門前の小僧のようになりました。

 

 

 どこの髪をどれくらい動かせば、やせて見えるか、若く見えるか、仕事ができるように見えるか、セクシーに見えるか、清楚に見えるか、・・・・・・etc.が、わかるようになってきたのです。

 

 

 今では本職の美容師さんがヘアデザインを勉強するための本を出させていただいたり、スタイリング剤の商品開発のお手伝いをしたり、美容院でどんなカウンセリングやスタイル提案をするといいかといったセミナーも全国各地でさせていただくまでになりました。

 

 

 私たちが想像している以上に、人の印象は髪に左右されています。

高価な美容液で肌をケアするよりも、前髪の分け目を5ミリずらすほうが、ぐんと若く見えます。

 3キロダイエットするよりも、もみあげの手前の毛を下ろす位置を変えたほうが、だんぜんやせて見えます。

 何十万もするブランドバッグを買うよりも、後頭部に1分カーラーをあててボリュームを出したほうが、よっぽど品よくお金持ちに見えます。

 上司に信頼されず昇進できないと悩んでいる女性の多くは、キューティクルがめくれてしまっています。

 

 

 モテたい、もっと若く見せたい、もっと細く見せたい、仕事ができると認められたい、人から嫌われたくない・・・・・・。 そういった女性の願いのほとんどは、ほんの少し髪を変えるだけ叶います。たった5分、いえ、3分でもいいのです。髪のことを知り、その触り方を変えるだけで、あなたの人生は「自分がなりたい自分」に近づいていきます。

 

 

 この本では、私が15年の間に教えてもらった、「なりたい自分になるための、髪の触り方と動かし方」(けれども、ハサミもアイロンも使えない私でもできること)を伝えたいと思います。

 必ずしも、髪を切ったり染めたりしなくても大丈夫です。毎日髪を巻いたりアレンジしたりする必要もありません。髪の影響力はとても強いので、ほんの少しスタイリングを変えるだけでも印象が激変するからです。でも、もちろん、髪を切ったりそめたりしたら、さらに大きな変化が訪れます。

 

 

女の顔を100点満点で評価するとしたら、その内訳は、顔(メイク)が50点、髪が50点です。

 

 

 生まれつき美人でメイクがばっちりで50点とっていても、髪が手入れされていなくて0点であれば、総合50点。

 逆に顔のパーツに自信がなくて30点であったとしても、髪が美しく50点であれば、総合80点。

 

 

 人はその総合得点で、その女性の印象を判断します。

 

 

世の中の「美人オーラ」をまとっている人たちは、そのことをよく知っているので、絶対に髪に手を抜きせまん。日本以外の国、とくにアメリカやヨーロッパの女性もそれをよく知っているので、メイクは日焼け止めにマスカラだけの女性も、髪だけは時間をかけてセットします。

 

 

日本人の7割が髪で損をしているのは、この「顔と髪で100点満点の法則」に気づいている人が少ないからです。

 髪に対しての意識をほんのちょっと変えるだけで、髪の触り方をほんのちょっと変えるだけで、突然あなたの総合得点はあがります。顔のパーツに自信がなくても、髪で満点をとれるようになったら、それに気づいていない人たちを全員ごぼう抜きにして、一発逆転することもできます。

 

 

 髪は顔に比べてすぐに見た目が変わります。

 見た目が変われば、人からの扱われ方が変わりますし、髪に引っ張られて、性格まで変わっていきます。性格が変われば運命が変わります。ここまでてっとり早く、自分の人生を変えることができるのは、髪をおいてほかにはありません。

 

 

 そんな髪のお話を、させていただきます。

 

 

 この本を読んでくださる皆さんが、髪を美しく見せるほんの少しのコツを実践し、鏡の中に、自分でも知らなかった新しい自分を見つけてくださったら、これ以上嬉しいことはありません。

 

 

 

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